障害年金における初診日

文責:弁護士 石井浩一

最終更新日:2025年08月05日

1 障害年金における初診日

 障害年金の申請に関して、「初診日」は受給の可否を左右する重要なポイントの1つとなります。

 初診日について、以下で詳しく説明していきます。

2 初診日とは

 一言でまとめると、障害年金における初診日というのは「障害の原因となった傷病に関して初めて医療機関を受診した日」となります。

 「初めて医療機関を受診した日」ですので、継続して同じ病院に通院をしている場合にはその病院の最初の通院日となります。

 また、同じ傷病で2か所、3か所と病院を転院している場合には、一番目の病院に最初に通院した日となります。

 初診日について、「現在通院中の病院の最初の通院日」と誤解される方もいるようですのでご注意ください。

3 初診日の重要性

 障害年金は、障害基礎年金と障害厚生年金に大きく分かれます。

 基本的には、厚生年金保険料を納めている分障害厚生年金の方が制度上、給付が手厚くなっています。

 しかし、障害厚生年金の申請となるか障害基礎年金の申請となるかは、初診日時点における保険の加入状況(国民年金か厚生年金か、簡単に言えば会社員か否か)によって決まります。

 さらに、障害年金の受給ができるか否かの前提条件として、保険料納付要件というものがありますが(20歳前傷病の障害基礎年金は除きます。)、これも、初診日を基準に要件を満たすか否かを判定することになります。

4 病名と初診日

 初診日は、「障害の原因となった傷病に関して」最初の通院です。

 例えば、人工関節挿入置換について障害年金の申請をする際、「昔風邪を引いて病院に行った日」は当然ながら無関係です。

 一方、「以前心療内科に行って適応障害と診断された」という通院歴のある方が、うつ病で障害年金を申請する場合、多くのケースでは過去の適応障害の通院が初診日と判断される可能性が高いといえます。

 これは、同一の傷病について診断名が異なっていただけと判断される場合があるためです。

 必ずしも申請しようとしている傷病名を診断された時点(「確定診断」等といいます。)とは限りませんのでご注意ください。

5 社会的治癒

 初診日に関する例外的な判断の1つに、社会的治癒というものがあります。

 例えば、学生時代に心身の不調から心療内科を受診し、うつ病と診断され、しばらく通院した後に症状が落ち着いて通院を終了した後、大人になってから何かのきっかけ等で再度心療内科を受診しうつ病と診断された場合、病名が同一であると当然申請傷病との関係性が問われることになりますが、再度の通院開始日を初診日と認められる場合があります。

 これを、社会的治癒といいます。

 「社会的」とあるとおり、医学的に完治しなければいけないわけではありませんが、一定期間社会生活を維持できていたか等の事情を総合的に判断して、社会的治癒となるか否かが判断されます。

 上記の例でいえば、症状が落ち着いたからではなく、通院が面倒になって症状を抱えたまま何年も過ごし、その後通院を再開したような場合には社会的「治癒」とはいえないでしょうから、単に時間が空いていればよい、というものでないことには注意が必要です。

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